株をするうえで、いちばん大切な指標は何でしょうか。
それはアメリカの10年債利回りです。
異論は認めます。笑
理由をまとめてみました。
世界全体の市場規模(2023年末時点の推計)
- 債券市場:時価総額 約130兆米ドル(推計値)
- 株式市場:時価総額 約110兆米ドル(推計値)
2023年末時点でも、債券市場は依然として株式市場よりも規模が大きく、債券市場は株式市場の約1.18倍の規模と推計されています。
債券市場は世界の金融市場の中でも最大の規模を誇ります。
国債、社債、地方債など、政府や企業が資金調達をするために発行するものです。
この規模の大きさから、金利の変動は経済全体に大きな影響を及ぼします。
「大きいものから語る」という視点
東京を語らずして日本を語れないように、金融市場を語る上で債券市場を無視することはできません。
投資において、「ビッグピクチャー」(Big Picture)が大切と聞いたことがあると思います。
将棋でいうと大局観でしょうか。
債券市場の規模とアメリカのシェア
2024年時点の債券市場規模は、以下の通りです。
- 世界の債券市場規模: 約138.24兆米ドル(2024年推定)
- アメリカの債券市場規模: 約55兆米ドル(世界シェア約40%〜45%で単一国家として最大)
- アメリカの株式市場シェア: 世界全体の約60%
なぜアメリカ市場が重要なのか?
- 規模の大きさ: 債券・株式ともに世界最大級の市場規模。
- 影響力の強さ: アメリカの金融指標(特に10年国債利回り)は世界の資本市場全体に影響。
- 基準指標としての役割: 世界の投資家がアメリカの10年国債利回りを基準として投資判断を行っている。
このように、アメリカの市場規模の大きさから、10年国債利回りはグローバル市場の安定性や資金の流れを左右する重要な存在です。
長期金利の代表指標としての役割
アメリカの10年国債利回りは、長期金利の代表指標として用いられています。住宅ローンや企業の長期借入金利の基準となり、個人や企業の資金調達コストに直接的な影響を与えます。
利回り変動の影響例
- 利回り上昇
→ 住宅ローン金利や自動車ローン金利の上昇
→ 借入コスト増加 → 消費行動の抑制 → 景気減速 - 利回り低下
→ 住宅ローン金利や借入金利の低下
→ 借入コスト減少 → 住宅購入や消費の促進 → 景気刺激
10年国債利回りの変動は、消費行動や景気循環に密接に関わっています。
グローバルな金融市場への影響力
アメリカの10年国債市場は、世界最大規模であり、安全資産として世界中の投資家の注目を集めています。米国債の信用力の高さから、各国の中央銀行や機関投資家が大量に保有しています。
影響の具体例
- 米国金利上昇
→ 新興国からの資金流出
→ 通貨安・資産価格下落・景気悪化 - 米国金利低下
→ 新興国への資金流入
→ 通貨高・景気回復
特に新興国市場は、米国債利回りの変動による資金流出入の影響を受けやすく、世界経済全体への波及効果も大きくなります。
中央銀行の政策に対する影響
米連邦準備制度理事会(FRB)や日本銀行(BOJ)は、金融政策を運営する際に10年国債利回りを重要視しています。
長期金利の動向は、金融政策の効果や市場の信頼性を測るための重要な指標です。
FRBの政策例
- 量的緩和(QE:Quantitative Easing)
- 市場から国債を大量に購入し、市場に資金を供給することで金利(利回り)を引き下げ、経済を活性化させる金融政策。
- 量的引き締め(QT:Quantitative Tightening)
- 中央銀行が保有している国債などの資産を市場に売却する、または満期を迎えた資産の再投資を行わないことで、市場から資金を回収し、金利(利回り)を引き上げる金融政策。
- 利上げ・利下げ
→政策金利の引き上げ・引き下げで短期金利を調整
日本銀行の政策例
- イールドカーブ・コントロール(YCC)
10年国債利回りを一定範囲(±0.5%程度)に維持する政策
これらの政策は、長期金利の安定を図り、景気や物価の安定化を目指しています。
リスクフリー・レートとしての役割
アメリカの10年国債利回りは、リスクフリー・レート(無リスク金利)として、グローバル金融市場で標準的な指標とされています。
リスクフリー・レートとは?
- 元本がほぼ減らない安全な資産の利回り
- 他の投資資産のリターンを評価するための基準
活用例
- 株式のリターン評価(CAPMモデル)
- 企業の資本コスト計算(WACC)
特に国際的なポートフォリオ運用では、10年国債利回りが基準金利として用いられ、その動向が世界の資本市場全体に影響を与えます。
インフレ期待と景気のバロメーター
アメリカの10年国債利回りは、市場参加者のインフレ期待や景気の状態を反映するバロメーターとしても機能します。
利回りの動向と市場の解釈
- 利回り上昇
→ インフレ懸念・景気過熱感。金融引き締め圧力が強まる。 - 低下利回り
→ デフレ懸念・景気減速感。金融緩和圧力が強まる。
利回り具体例
- 債券売却時(利回り上昇 )
- 市場金利が4%に上昇すると、年利2%の既存債券は魅力が低下し、売却が増加。これにより市場価格が9万円に下落します。
ただし、利息(2,000円)は発行時の契約で固定されているため変わりません。
結果、利回り = (2,000 ÷ 90,000) × 100 = 2.22% と上昇します。
- 市場金利が4%に上昇すると、年利2%の既存債券は魅力が低下し、売却が増加。これにより市場価格が9万円に下落します。
- 債券購入時(利回り低下)
- 市場金利が1%に低下すると、年利2%の既存債券は高利回りとして魅力的に。
購入増加で市場価格が11万円に上昇しますが、利息(2,000円)は固定のまま。
結果、利回り = (2,000 ÷ 110,000) × 100 = 1.82% と低下します。
- 市場金利が1%に低下すると、年利2%の既存債券は高利回りとして魅力的に。
このように、債券の価格と市場金利の関係は 逆相関 です。
株式益回りと長期債利回りの関係
株式益回りとは?
- 株の割安さを示す指標
- 計算方法:1 ÷ PER(株価収益率)
- 例:PERが20の場合 → 株式益回りは5%(1 ÷ 20 = 5%)
株式益回りと長期債利回りの差
- 計算方法:株式益回り ー 長期債利回り
通常の関係性
- 株式益回りは長期債利回りより3%程度高いのが健全
差の解釈
- 差がプラスの場合
→ 株式益回りが高い = 株のリターンが期待できる- 例:株式益回り5% − 長期債利回り3% = 2%
- 差がマイナスの場合
→ 株式益回りが低い = 株の割高、債券の方が魅力的- 例:株式益回り2% − 長期債利回り3% = -1%
差がマイナスになる理由
- 株価の高騰
- 債券利回りの上昇
- 株のリスクが高まっている
判断ポイント
- 差が3%以上 → 株式のリターンが魅力的
- 差が1%程度 → 株式のリスクとリターンが釣り合わない
- 差がマイナス → 債券の方が安全で魅力的
- 差がマイナスの場合は注意!
→ 債券の方がリターンと安全性の両面で優位となる可能性があります。
まとめ
金融市場を語る上で、債券市場は規模の大きさから無視できない存在です。
特にアメリカの10年国債利回りは、長期金利の指標であり、住宅ローン金利や企業の資金調達コスト、さらには世界的な資金の流れや中央銀行の政策にも大きく影響します。
投資においては「ビッグピクチャー」(Big Picture)、つまり全体を俯瞰する視点が重要です。
株式益回りとのバランスを見極めながら、リスクとリターンを意識した資産配分の調整が可能になります。
今後もアメリカの10年国債利回りの動向を注視し、経済の変化や市場のセンチメントを的確に捉えながら、リスク管理と資産運用の最適化を心がけましょう。
毎朝アメリカの10年国債利回りを確認しています(*^^*)
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