2024年12月13日、ブロードコム (AVGO)が市場で大きな注目を集め、年初来から株価が100%以上急騰するという驚異的なパフォーマンスを見せました。
同社の最新の四半期決算は市場予想と一致する堅調な内容で、さらに人工知能(AI)チップ市場における今後の巨大な成長機会が明らかになり、投資家に大きな希望を与えました。
本記事では、ブロードコムの急成長の背景、AIチップ市場での展望、競争環境について掘り下げます。
ブロードコムが見せた驚異的な成長
ブロードコムは、2024年10月期に売上高140億5,000万ドル、1株当たり利益1.42ドルを達成しました。
前年同期比では売上高が51%増、利益が28%増という力強い成長を見せています。
特に注目すべきは、AIチップ関連事業の成長であり、2024年度の売上高は122億ドルと前年比220%増を記録しました。
また、2027年までにAIチップおよび関連市場が600億ドルから900億ドル規模に拡大すると見込んでおり、ブロードコムはこの分野でトップシェアを確保するための有利な位置を占めています。
AIチップ市場の巨大な可能性
AIチップ市場は現在、生成AIやハイパースケールデータセンターへの需要増加を背景に急速に拡大しています。
ブロードコムはこの市場で特定のニッチを開拓し、独自の強みを発揮しています。
特に、Alphabet(Google)、Meta(Facebook)、ByteDance(TikTokの親会社)などの大手ハイパースケール顧客に対するAIチップの供給で、競争力を高めています。
さらに、CEOのホック・タン氏によれば、2027年までにこれらの既存顧客からのAIチップ関連の収益が最大900億ドルに達する可能性があるとのこと。
この見積もりには、最近契約が進んでいるApple(AAPL)やOpenAI(ChatGPTの開発元)といった新規顧客は含まれておらず、さらに大きな成長余地が期待されています。
ブロードコムの競争環境と技術的優位性
ブロードコムは、主にカスタムAIアクセラレーター市場で競合するマーベル・テクノロジー (MRVL)や、汎用AIチップで圧倒的な存在感を持つエヌビディア (NVDA)、AMDとの競争に直面しています。しかし、ブロードコムは以下の点で独自の競争優位性を持っています:
- 特化したAIチップの提供:ブロードコムは特定用途に最適化されたAIチップを提供しており、特にネットワーキングやインフラ用途での技術力が高く評価されています。
- 3ナノメートルチップ技術のリード:2025年春には次世代の3ナノメートルスケールのAIチップを出荷予定で、技術面でライバルより1年先行していると見られています。
- インフラストラクチャソフトウェアとの統合:VMwareの買収に成功し、インフラストラクチャソフトウェア部門を拡大させており、ハードウェアとソフトウェアのシームレスな統合を可能にしています。
投資家へのインパクト:ブロードコムは買いか?
ブロードコムの株価は今回の好決算を受けて史上最高値を更新しましたが、アナリストたちはさらなる成長余地があると見ています。
- バーンスタインのステイシー・ラスゴン氏は、ブロードコムの目標株価を195ドルから250ドルに引き上げ、「AIストーリーが本格化している」と評価。
- ローゼンブラット証券のハンス・モーゼスマン氏も、ブロードコムが次世代AIチップ技術で1年先行している点を強調し、株価のさらなる上昇を見込んでいます。
特に、AIチップ市場の急成長と新規顧客の契約進展が引き続き株価を押し上げる可能性が高いと予測されています。
AIチップ市場におけるエヌビディアとの対比
一方で、AI市場をリードしているエヌビディアは、巨大な汎用チップで広範なAIアプリケーションをサポートしており、依然として業界のリーダーとしての地位を維持しています。
ブロードコムとエヌビディアは、それぞれ異なる部分に注力しているため、直接的な競合というよりは補完的な立場にあると言えます。
エヌビディアが生成AIブームの恩恵を受ける中、ブロードコムは特定用途向けAIチップとネットワーキング技術に集中することで、異なる価値を提供しています。
エヌビディアと住み分けできているのがよいですね。